映画「おくりびと」鑑賞 ~万人向け癒し系映画2009年02月19日 23:36

映画「おくりびと」ハート型推薦文メモつき割引券
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたからと言うわけではないのですが……「おくりびと」観てきました。これはTBSラジオのヘビーリスナーで話題にされることが多い分、興味がわいたラジオの洗脳硬貨の賜物かも。

結論から先に言えば面白いし、いかにも賞獲りレース向き名作品だと思えるのですが、良くも悪くも常識的の範囲内。自分の期待するもっと冷めた部分での生死感を描くエグさは抑え目で、広く一般的な癒し系の作品に感じました。いやいや、クサす必要なく良作だと思います。

この手の“マイナーな職業”を描く映画は暴露的な面白さを売りに、トコトン見せてしまうのが常套。その意味では王道なつくりなのですが、暴露という視点で期待してしまうのはウラの世界の汚さや、矛盾点などのマイナス因子を期待してしまうのが人情。

映画を観ていても、前半で登場する人々と出会い、人間的な交流をするにつれ“この仲の誰かが死んじゃうんだろうなぁ”という先読みをして当たり前だし、“やっぱり”の展開もあるのだけど、その“読める具合”と、ほどほどの毒気で成り立たせているのが万人向けたる部分でしょうか。

ほどほどの毒気は自分もおいしく頂戴いたしました。死体ショックから食欲がない描写も、時間がたつにつれ慣れて行くステップは“いじわるな描き方するなぁ”とニヤニヤしましたし、その適度な悪趣味は自分だけでなく広く受け入れてもらえそうでした。生きるためには必要なことがあるんですよ。

広末涼子演じる奥さんキャラクターは、最初の嫌がり具合が過剰にすら思えてしまったのは、自分の感覚の方がずれているのかナァ。納棺師という職業を、死そのものを受け入れるまでのステップが大切なのも分かるのですが、個人的に一番感情を汲めなかったキャラクター。

個人的に一番押したい気に入ったシーンは山崎努演じる社長が寝ているところを見た社員がポツリと言った「社長も歳とったわ。」というシーン。
死を荘厳に描くのは簡単で、お涙頂戴もそりゃできるでしょう。でも、そういうアプローチではなく、無様とも思える姿で生きる日々や、老い、誰もがその日へのカウントダウンを背負っていることを意識させてくれます。印象的なシーンでした。

監督の次回作は「釣りキチ三平」。こちらも楽しみ。