週刊ディズニー・ドリーム・ファイル 新創刊 ― 2009年05月19日 22:54
その名も『ディズニー・ドリーム・ファイル』(以下、DDF)。
■ディアゴスティーニ「ディズニー・ドリームファイル」公式HP:http://www.de-club.net/ddf/
この雑誌はデアゴスティーニお得意の分冊百科。創刊号にもついているファイルにテーマ別に分類していくカード形式の雑誌で、雑誌状態から簡単にページが引き剥がすことが出来る製本。
創刊号のシリーズ構成の解説に拠れば、ファイルは全6部構成。「キャラクター・プロファイル」「アイテム・プロファイル」「作品の舞台裏」「感動を作る舞台裏」「ディズニー・データ・コレクション(映像作品)」「ディズニーランド・フォーカス」のテーマで分割。
日本では定期雑誌『ディズニーファン』(講談社刊)が発売されていますが、テーマパークを中心とし、最新作こそ特集されることはあっても、基本的に映像作品は添え物でメインは東京ディズニーランドの定期情報を紹介する雑誌。
対して今回のDDFは映像作品中心。テーマパークはあくまでも添え物。その意味では日本での積年の不満を吹き飛ばす快挙です。英語圏での出版ではさして珍しくないかもしれませんが、日本語のビジュアル百科という意味では、良書になりそうです。
内容面でも、アメリカのアニメーターのドローイングを紹介する『Skechches』の共編者で、ディズニー専門の作家・歴史家・編集者であるジム・ファニング氏が監修しているとのこと。なるほど、大幅なポカをやらかすことはなさそうな手堅い人を据えてます。
確かにおなじみのビジュアルから、結構珍しい図版まで赤色混合な印象。アニメ現場のモデルシートやら、原画の並ぶページはファンには嬉しい紙面といえそう。
ただ、どうしてもファン暦が長いと結局それぞれのメイキング本やDVDの特典画像などで見覚えがある画像が並んでしまうのは致し方ないところ。新鮮味ある画像がどれくらい詰まっているか、購買者によって“お買い得感”が変わってきそう。
個人的にはかなり微妙なラインで、整理された情報は快感もあるけれど、その“入門者用”に整理されたテイストに物足りなさも。でも、くだくだと例外を紹介してもしょうがないので、一般雑誌としては申し分ないと思います。
一件豊富に見えるビジュアル・データですが、1冊の中で何度も同じ画像が使いまわされるなど、決して現場は余裕がある状態ではないことがうかがい知れます。また、結局のところ、アメリカ文化の中で作られたデータ整理である性質上、毎度感じる不行き届きに目に付きます。日本国内データは、ないがしろです。
「データ・コレクション/ピノキオ」のページに注目してみると、アメリカの公開日だけでなく日本の公開日も併記して、まるで日本国内のデータも大切にしているように見えるけれども、実際はそうでもない。配給会社の表示もアメリカのオリジナルRKOのみ。日本語吹替えのキャストも紹介されているのは、初代キャストではなく1983年に新バージョンとして録音しなおされた、最新バージョンのみ。録音年度などの表記はないので、あたかも日本封切時にはそのキャストであったかのようなスルーぶり。
1952年日本封切時はスーパーインポーズ(字幕)のみで日本語吹き替え版が製作されたのは1959年。
ダメだ、こりゃ。
結局、ディズニー文化を歴史的に蓄積しているのは本国アメリカだけで日本では歴史的資料として誰も手に付けないのか、それともオフィシャルの存在がそれだけ大きく、研究家なんて日本にはいないのか。それともいても黙殺されてしまうのか……。結果、毎回こうやって不完全なものを流していくしかないのでしょう。
仮説として、現在手に入るバージョン以外を封印したいというオフィシャルの都合である可能性も想像できますが、きっと単純な資料不足でしょう。
ネットに何でもデータがあると思ってはイカンのですよ。地道に当時の資料をあたって調べた先人の蓄積があるアメリカでの資料面はよさそうですが、今回の本はローカライズ面でネット程度の情報しか手に入れられなさそう。そんな部分に自分はイライラさせられそうです。
アメリカ人研究家の蓄積がある分、DDFの本文はしっかりしていそうですが逆に言えば固定化された歴史の振り返りなので、これまで見た出版物と差を見出せそうにありません。
たとえば、「キャラクター・プロファイル/ミッキーマウス」。
コミック版でしか登場しない多数の親戚をビジュアル入りで紹介するなど、かなりイイ線を言っている編集です。しかし、出生の設定の変化によって矛盾が生じている部分をスルーしているきらいがあります。
20~30年代のミッキーマウスは孤児出身の出世物語をしょっていて、そのせいもあって『ミッキーの芝居見物』などでミッキー顔の孤児を集めてショーをするなど意味が通じていたのに、その後、甥っ子(モーティー・フェルディ)が登場し、親戚連中が続々登場し、“孤児設定”は淘汰されました。それらを現行設定がオフィシャルなのだからと無視すると前出のアニメで何が行われているか意味が分からないなどの矛盾が生じてしまうのです。
歴史的にデータを編纂するというのは変わった部分も含めて、どう変化をしていったかを触れるべきです。
その意味、今回の本はあくまでも入門書。
今回は半額ですが来週からの580円でも充分な編集だと思います。 今まで、いろいろデアゴスティーニの分冊モノに手を出してみましたが、今回の編集は値段に見合ったすばらしい出来。人に感想を聞かれたオススメです! と答えられます。
でも、「週刊マイディズニーランドや全集で買うの大変だね。」と言われたら返答は簡単です。「全部買えるわけがない!」
DDFは買うとストレスがありそうなので、今のところ全巻購入する気持ちはありません。
コメント
_ しらいしろう ― 2009年05月27日 11:46
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例えば作品表記。
1-14ページ
「1977年には長編となり『くまのプーさん 完全保存版』として公開されています。」
そんなタイトルでは公開されてません。(^^;
現行流通DVDのタイトルに合わせるなら、この表記はおかしいでしょう。年号まで入れちゃって。
『シンデレラ』も封切時は『シンデレラ姫』だから、どこか一箇所に併記が必要だと思う。これは後の号の作品データページに集約するのかな?(しないと思うけど。)
これらを考えるとミッキーマウスの製作1話目『プレーン・クレイジー』も旧名『ミッキーの飛行狂時代』の併記が必要に思えてくるし……。ああ、面倒だから全部現行DVDタイトルにしちまえ、と思う気持ちも分からなくはない。でも「完全保存版」はいくらなんでも……。
他にもその後気になった点いくつか。
1-6ページ、ミッキーマウスの折込下段のトピックから。
「近年ではミッキー、ミニー、グーフィー、プルート、ドナルド、デイジーの「ビッグ6」にチップとデールを加えて、「ビッグ8」と呼ぶこともある。またアメリカでは「ビック6」ではなく「FAB6(ファビュラス・シックス)」と呼ぶ。」
パードゥン?
どこで呼ばれているのかが曖昧なので、そこで呼ばれているのならしょうがないけど、一般的な説明としてこれでいいの?
少なくとも10年前のスタイルシートなどでは「ビッグ5」(ミッキー、ミニー、ドナルド、プルート、グーフィー)と、そこにデイジーを足した6人は「センセーションル・シックス」と呼んでましたよね。イニシャルを重ねる英語的な洒落から言えば、重なっていない「FAB6」より信憑性を感じるけれども……。
まぁ、アメリカの名称以外、どこで呼ばれているか説明されていないからどーでもいいけどサ。
ミッキーの白目の件は柳生すみまろさんが好きなキンボール説ではなく、Fムーア説(1-3ページ)なのも、重々分かるけど、一般読者は混乱しそう。白目処理の一作目が『ファンタジア』ってのも製作着手の順として正しいけれど、一般人は公開順で考えるから、ここも混乱ポイント。
『リロ アンド スティッチ』のページから、Behind the Scene(1-10ページ)。劇中登場する「みにくいあひるの子」がディズニーアニメを基にしていると指摘。
えっ? デザイン違うでしょ。それとも自分の目がおかしいのかな。
シリー・シンフォニーのリメイク版「みにくいあひるの子」にミミズなんていたっけ。これは要確認。あくまでも“元”の意味がモチーフにして変えているなら、何も原作を差し置いて“元”と言い切る意味がわかんない。“ディズニーもアニメ化しています。”なら理解できるけど。
読めば読むほど、やっぱり問題がありそう。
ベル風に言うなら「Not for me」な雑誌みたい。