映画『さや侍』観てきたよ ― 2011年06月26日 23:59
刀を捨てた侍が脱藩の罪で追われ、刺客に狙われたあげく藩に捕らえられる。そこでは母を亡くし笑顔が失われた藩の若君を笑わすことが出来れば無罪放免、その期限30日という「三十日の業」を殿様から科せられる。1日1芸を繰り返すが笑う兆候は現れず、日は無駄に過ぎていく。失敗すれば切腹、その日は刻一刻と迫ってくるが……。
設定や展開自体のドラマ性には惹かれるものの、前半はかなり不安な気分で鑑賞してました。何しろ、「スベリ芸」的な微妙な時間が延々続き、この調子で30ネタ見せて終わるんかい?? と暗雲立ち込める様相。
でも、さすがにそんなことはなくて、ドラマ的展開が、きちんと盛り上がる方に進んでくれるので飽きることなく、ダレることなく楽しめました。
何よりも主人公の「さや侍」の娘役である子役の演技力が素晴らしく、それだけで安定感もってドラマを引っ張っています。そもそものところ、主役の侍だけが異様に演技ではなく“素”の存在感。途中まで、ほとんど台詞を話さないので、話さない設定なのかと思ったらしゃべるシーンも出てきて、観客としてはかなり翻弄させられました。
映画を見終わってから、その辺のカラクリを調べてみたのですが、なかなか面白い試みで、よくそんな状況下でこの作品が作れたもんだという意味ではかなり驚嘆させられました。(カメラをいつ回しているか主演に伝えない、撮影はDVD用と聞かされ、主演の自覚が無い。)逆に、主演が主演たる演技を自覚していない分なのか助演の顔ぶれがの國村隼、伊武雅刀らは特に安心材料でしたし板尾創路+國村隼の組み合わせは『脱獄王』も浮かび“この映画までの流れ”が、ぼんやりつかめた分、興味深い部分もありました。
前評判の悪さに自分のハードルが低すぎたせいかもしれませんが、充分な映画に感じています。
笑える映画化といわれれば、むしろNO! で、笑いをテーマにしているものの哀愁と運命とも言うべき道化師を描いた作品に感じます。そもそものところ、自分はダウンタウンの番組はあんまり得手ではないので、若手をいじめて笑う傾向の番組は特に苦手なのです。(たとえ「愛があるじゃん!」と反論されても。)その意味では劇場でクスクスと笑いが漏れても、自分には痛々しくてなかなか笑うことが出来ませんでした。
でも、それが評価の“悪し”にはならず、むしろ“微笑み”をもらえて、充分に栄養になりました。
演出は最初、飛び道具系でいかにも尖った感じで不安を覚えたのですがドラマを進め、観客の感情を掴むまでのオーソドックスな部分はむしろ王道。ただ感情が盛り上がってくると照れてしまうのか計算なのか、はたまた、天邪鬼的サービスなのか、奇妙な演出に。でも、そこが味といえば味。個性的すぎるほど個性的。
じわじわくる可笑しさに満足できたので、自分は好意的に楽しめた作品です。
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