幻のPVC『マークアンソニーとプシーフット』思い出話2006年10月19日 06:32

Marc Antony and Pussyfoot (1995) by Applause
色々なショップがなくなったと思い出す中で、ひときわ地味に印象が残っているのが95年ごろ半蔵門地下鉄、水天宮前駅にあった輸入雑貨店。
新宿三丁目の丸井の中にあった輸入雑貨コーナーの卸しの業者さんの本店で、普通に活動していたら見つけられないような立地条件でした。

その頃の水天宮前駅は半蔵門線が到達したばかりの終着駅。東京シティ・エアターミナル以外は特に利用する人がいなさそうに見える最果ての印象でした。その駅を降りて東京シティ・エアターミナルを越えて1ブロックほど歩き、住宅地に左折するとビルの1階に楽しげな店舗が現れます。店の入り口には等身大と思われるシルベスターのぬいぐるみが飾られシルベスター以外にもルーニー・テューンズの大型ぬいぐるみが置いてありました。店主のお話では旅行のお土産に購入し抱っこするように東京シティ・エアターミナルに向かったお客さんも居たそうです。

立地的についでに寄る場所にも出来ず、行ったら行ったで折角来たのだからと店内を隅から隅までじっくり見ていました。卸しがメインなのかお客さんも多くなく自分は目立つ存在だったかもしれません。店主と話すようになり、輸入雑貨にまつわる工夫や苦労話、新製品のリリース情報などを話題にしていました。そんな中で出会ったのがマークアンソニーのPVCフィギュアの情報でした。

80年代から90年代まで米・アプローズ社(現:RUSSブランド)から定期的にリリースされていた『ルーニー・テューンズ』のPVCフィギュア。多彩なラインナップと趣向を凝らしたポージングは年々目を見張る技術革新を見せてくれてファンにとっては定番のコレクションアイテムでした。
商品シリーズのカタログを見せてもらい、身もだえするほど衝撃のアイテムがこのマークアンソニーとプシーフットのPVCフィギュアでした。しかし、商品のアソートはごくごく僅少でそれだけをピックアップして輸入することは出来ないという説明。喉から出た手は行き場なくノタうつだけでした。

ルーニーファンでPVCフィギュアのコレクターでもある知人N氏に話し、お互いにとってしばらく幻のアイテムとなっていたのですが、その知人がアメリカに行き遂に実物に遭遇することとなりました。
本家アメリカでのショップの待遇はそれこそ、いまだに笑い話になっている状態です。コミックのコレクションショップのような場所だと思います。まだ現行商品だったのに軽いプレミア値段でショーウィンドーに並んでいるのを見つけたN氏は大興奮。店員を呼んで指差し、「マークアンソニー! トゥー・プリーズ!」と注文すると店員が大爆笑。マークアンソニー? HA ! マークアンソニー! HA HA HA !と下からしゃくり上がるような笑い声を上げながら別の店員を呼んで二人で笑い出したそうです。「こいつ、”マーク・アンソニー”欲しいんだってよ!HA HA HA !」

一体何が可笑しいのでしょう。帰ってきたN氏と仮説を立てて行き着いたのが、こういう事ではないかと。
日本のショップに白人の旅行者とおぼしき客が現れ、ショーウィンドーの前で日本人しかピンと来ないようなマイナーキャラ、例えるならばオバQの小池さん辺りのフィギュアを大喜びしながら2個くれと言っている状態。メインのオバQとかは置き去りで。
それくらいならば、なんとか想像できなくもないですが……。でも客を笑うほどのキャラクターって、どうなんだ。アメリカでもそんなに特殊なポジションだったと言う事なのでしょうか。この後には何度か商品ラインナップに入って、充分ルーニーの一員として昇格したんだけどなぁ。

兎に角、N氏が笑われながら購入してきてくれたおかげで、念願のフィギュアを無事入手。今でも、お宝フィギュアとしてmyコレクションの上位ランクになっています。

数年後、NYのお土産店でいっぱい売れ残ってる姿を目撃したのですが、考えてみれば2個目、3個目を買ってくればよかったと後悔しています。
売れ残るポジション、今でこそ何となく理解できます。そしてそれが笑いの理由だったのかと……。