非常ベルを押す人々2007年04月19日 01:10

非常ベル押したことありますか?

幸い自分はありません。でも、友人が目の前で押すのは2度遭遇しています。特に非常事態があったわけではありません。両方のケースとも、理由なきプッシュでした。
中学で一度、高校で一度、自分の目の前で押す所に遭遇するというのも何か自分の持って生まれた運なのでしょうか。それとも自分と波長の合う人間は非常ボタンを押しやすい性質の持ち主だとか……。

初回は中学校の職員室の前で起こりました。僕は壁によりかかり友人と立ち話をしていました。ふいに友人の目が泳ぎました。

たぶん、魔が差すとは正にああいう瞬間なのでしょう。僕の背後にあったボタンを押すまでは瞬時で、話題に前フリなんかありませんでした。有無を言わさずポチっとな。
「えっ?」
自分の後ろに何か起きた? と振り返る間もなく鳴り響くベル。職員室から飛び出してきた先生は、ボタンを引っぱれと言ったような気がします。そして友人は職員室に連れて行かれました。とにかく驚きました。

そして高校生活でも起きました。
今度の舞台は催しで参加した校外の運動競技場でした。施設の中で数人でおしゃべりをしていた時です。
僕と話していた友人の目が、一瞬うつろだなと思った次の瞬間です。その友人も僕の横をすり抜けるように手を伸ばして押しました。
鳴り響くベル。慌てる本人と周囲の反応をよそに僕だけは「ボタンを引っぱってみれば?」と対策をアドバイスする、微妙なテンション。何しろ二度目だったので……。でも、今回の非常ベルは引っぱっても鳴り止みません。しばらくすると先生たちが飛んできて、友人はしょっ引かれました。

どちらの友人も仲良しだったので、その事件後、なぜボタンを押してしまったのか話してもらったことがあります。
差はあるのですが要約すれば似たような事を言っていたのが印象的です。

非常ボタンにはプラスチックのカバーがついていて非常時には押し割る形のものが少なくありません。そのプラスチックだけを割り、ボタンを押さないつもりだったと聞いた覚えがあります。プラスチックとボタンにはわずかに隙間があるので、可能に思えます。その可能性が誘惑なのかもしれません。
もっと段階的な表現も聞きました。僕からすれば一瞬だった、あの瞬間には「これくらいの力ならば大丈夫」、そして「これでは?」をすごい回数繰り返しをしていたらしいのです。当人にとってはすごい高速の世界らしいのです。

未だにその気持ちを完全に理解することは出来ないのですが、理論的には理解することが出来ます。スリルが欲しかったのだね、と。
あれは青春と言う不安定な時期に起こるアンバランスゾーンなのでしょうか……。