ウォーリー/WALL-E のデザインを観察してみよう2008年12月04日 12:36

WALL-E and R2-D2
ウォーリーのデザインが発表されてからは、ネット上では“あれやこれやに似てる”の話題があちこちで盛り上がりました。

『ショートサーキット(1986)』の“ジョニー5”だ、『E.T.(1982)』のロボット版だ、『スターウォーズ(1977)』のR2-D2だ、『火の鳥-未来編』のロビタだ、80年代ウィスキーのCMキャラ、恋するロボット“アポジー”と“ペリジー”だ……。

それぞれの意見は懐かしく、楽しめました。これらのタイトルが出るあたり、同世代の人が多いのだろうと思わされました。個人的には“アポジー&ペリジー”を推します(笑)。

冗談はさておき、直系の影響元はご存知の通り、R2-D2です。サウンド・デザイナー、ベン・バートの起用を例に出すまでも無く、スタッフのインタビューなどでも名が挙がっているので、ソースが気になる方は検索に飛んでもらうとして、なかなか興味深いなぁとウォーリーを眺めています。

そういえば77年当時、出回ったR2-D2の分解透視図のパロディ図版まで用意されています。
(DK社刊「WALL-E INTERGALACTIC GUIDE」の見返に掲載あり。当ブログでは、フィギュア画像の背景に使用。)

Amazon.co.jpで:「Wall-E: The Intergalactic Guide 」を見る
WALL-E: The Intergalactic Guide

もともとルーカス・フィルムの一部門だったピクサーが選んだ題材が、回りまわってルーカス・フィルムの代表作にイメージをもらっているのも面白いし、結果的に近いところに着地した偶然も面白いです。

R2-D2が流行った初作の公開時、その造形をやや揶揄するように「ゴミバケツに手足をつけたヤツのどこがいいんだ」と決まり文句のように言われたのを思い出します。R2の中身は決してゴミではありませんが、イメージとしてまとわりついていたゴミバケツ。ゴミ処理ロボットのウォーリーと重なってしまうのは気のせいだけではないようです。

R2のイメージから離れることを命題としてデザインの試行錯誤があったであろうウォーリー。円筒系からキューブと言う図形的な転換は、結果的に違うものに見えますがシンプルな図形を基調としている点では似通っています。

決定的に違うと思わせる顔部分の存在は、双眼鏡をイメージソースにして解決されていますが、その接合に細い首を配置して、結果的には『E.T.』に似てしまっているのも面白い部分です。インタビューなどの記事によれば60-70年代のSFから多数のイマジネーションをもらっていることが明言されてますが、『スターウォーズ』に縁も深い映画。宇宙をイメージさせるキャラクターという意味では、影響が無かったとは言い切れない相似形でしょう。

『E.T.』の目は老人の写真を集め、思慮深い表情を求められました。ウォーリーはどうでしょう。双眼鏡をイメージソースに選んだ最大の理由は無機物なのに、真ん中の接合部の角度をかえるだけで笑ったり怒ったり見える表情の豊かさです。

双眼鏡のままかと観察してみましょう。
ウォーリーの完成デザインは、どこか悲しげです。双眼鏡でポピュラーな形に比べて、直線的な面はより水滴のようにカーブを描き、垂れ下がったような表情になっています。
700年も地球に一人ぼっちと言うキャラクター性を考えれば、ハマったデザイン。その、どこか悲しさを称えた表情のまま転んだり、ドジするイメージは、どこかピエロ的、ひいてはチャップリンのメイクを思わせます。
無表情で悲しげな顔つきがかもすコメディ的素養。

そういえば今回の映画、開始から約30分の間、セリフがほとんどなく、パントマイム的に動きで感情を表現するシークエンスが続くし、事実サイレント映画の類やチャップリンの作品も影響のソースになっているそうです。デザイン面で言及されているソースを見かけませんが、決して無関係ではないでしょう。

キューブに双眼鏡。基本的なコンセプトは、その2つだけなのに、この完成度。見れば見るほど、奥の深いデザインです。

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