映画 くもりときどきミートボール(3D版) ~期待値以上の好作品 ― 2009年10月09日 23:59
時流の3D版上映バージョンで鑑賞。
■「くもりときどきミートボール」日本公式HP:http://www.kumori-tokidoki.jp/
太平洋にうかぶ小さな島を舞台に、珍発明家が発明した水から食べ物を作るマシンによっておこる騒動を描くドタバタ・ファンタジー。
いかにもライトなボリュームを想像させられるあらすじながら、ハリウッド的な料理でハイテンションのクライマックスへと持っていくあたりは、さすが映画娯楽の国らしい。
キャラクターデザインのセンスは他の長編作品ではあまり見かけない、ディフォルメのきついコミカルな仕上がり。
エンディングでは、こちらをやりたかったのではと思わせる50年代的な絵本タッチの作画が登場し、シュルエット優先デザインをうまくモデリングしてと3DCG化していることが伺える。これは他社のCGアニメでも同様に感じられるアプローチだが、ここまでストレートに仕上げたものは珍しく、チャレンジ精神は大いに買いたい。
反面、いわゆるニューレトロ作画風味のデザインはギャグアニメ的。このデザインは短編アニメ的なギャグには適しているものの、いわゆる“マンガのお約束”である<高いところから落ちても死なない><ツブれても平気><感電しても黒くなるだけ>などの、不死身が前提のギャグが前面に出てしまい、痛みを伴わない暗黙のルールが画面を支配してしまうもの。その意味で、起こる騒動でのピンチに犠牲者が出ない安心感と同時に緊迫感が損なわれてしまう部分が多少ならずともあるのだが、そこは内面描写へスライドさせていて上手なバランスを保っていた。
特に父子の関係性を描くドラマ部分は、まるでセサミストリートの人形のようなデザインの親父とカートゥーン丸出しの主人公で、十二分に心情を伝える演技をさせていて、演出力を発揮していた。
作り手のアニメ好き、映像好きが伝わってくる引き出しも爽快。
ミートボールの竜巻シークエンスは「ミッキーの大演奏会(1935)」だし、 巨大なゼリーで戯れるイメージはシリー・シンフォニーの「田舎のねずみ(1936)」や『トムとジェリー』シリーズで見られるソレ。
個人的に妙にツボで爆笑してしまった『グレムリン』(特に「トワイライト・ゾーン」版)のパロディシーンは、劇場でウケてる人が少なく、妙に自分の笑い声だけ響いてしまった。
肝心の立体処理は、旧世代的な“飛び出す”演出というより、奥行きや空気感を伝える、今のメインストリートよりの大人しい方向性で、落ち着いた印象。
最大公約数的に観客にウケるエンターテイメント作品なのに、あまり話題になっている印象を受けないのが残念。
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