とびだす!3D東映アニメまつり ~きかんしゃやえもん50周年に乾杯2009年10月23日 11:45

とびだす!3D東映アニメまつり ~きかんしゃやえもん/チラシ
忘れられていなかった! 名作絵本「きかんしゃやえもん」の50周年イヤーになる今年。久々に行われる複数タイトルが集合して上映されるスタイルの、いわゆる“まんがまつり”形式の中で、新作3DCGアニメーション新作として「きかんしゃやえもん」が公開!

■東映アニメまつり公式HP:http://www.anime-matsuri.com/

これは「やえもん」ファンとしてだけでなく、久々の“まんがまつり”として体感したいぞ! そう報道を見ながら、劇場に行くことを決心した今回の興行。気がつけば最寄劇場といってもいい新宿バルト9での上映が今日まで。昨日、気がついてよかった。駆けつけました。(関東圏はまだ数館、数日やってる劇場アリ。)

受付で元気良く「“東映まんがまつり”、大人一枚」と、恥らうことなく言ったら、やんわりと「東映“アニメ”まつりでよろしいですね。」と、正された。 ふーんだ、ふーんだ。“東映アニメ・フェア”時代だって来てるんだから!!! (←むしろ駄目人間だろ。それは。)

今回初の試みで、上映作品はすべて3D映像作品。残念ながら「やえもん」以外は既にアトラクションなど、特殊携帯で上映された旧作。

「デジモンアドベンチャー3Dデジモングランプリ!(2000)」はサンリオ・ピューロランドで上映された作品。本編7分。細田守・演出作品というデータに期待を膨らましては期待はずれになりそうな、アトラクションフィルム。2000年製作というタイムラグを差っぴいても、見事にキャラクターの顔見せ消化とギミック(立体映像)のみの内容。

「デジモンセイバーズ3D デジタルワールド危機イッパツ!(2006)」も同じくピューロランド上映作品。「グランプリ!」からの日進月歩を感じられるけれど、アトラクションフィルムとしては、やはり平均値か。ストーリーラインが、ほぼないに等しいので、キャラクターになじみの無い大人観客としては感情移入しずらいキャラの顔見せ程度の紹介&世界観。本編7分。

「ゲゲゲの鬼太郎 鬼太郎の幽霊電車(1999)」は、花やしきや富士急ハイランドなどのテーマパークで上映された作品。本編14分。今年の正月にサンシャイン展望台でも存在を確認しているので、現在でも稼動上映している可能性アリ。劇場で上映するタイプの作品ではなくライド型の上映機材の中に入り、裸眼で特殊モニターを眺める形で鑑賞するのが本来の姿。定員2~3名、1回上映500円程度だったと記憶。

上映時間が14分と、「デジモン」と比べて長いので明確なドラマが楽しめるのが嬉しい。細田守・演出作品。
テストで0点をとった少年・三太はねずみ男にそそのかされて、幽霊列車で昨日へ行き、再度テストを受けようとするが、その道のりには一昨年、昨年の駅を通過。その時々におかしたいたずらを反省させられる結果に……。
古い地下坑道のディテールが3D映像としてムード満点。

正直、旧作の3D作品は、アトラクション用で作られているせいもあって、見世物的な飛び出し効果で目が疲れる演出。特に「デジモングランプリ!」は旧世代的CG画面な上にハイスピード映像で、飛び出しも狙うので、目が追いつかずパカパカしちゃってます。

この調子で「やえもん」だったら、ツライぞと思ったら、さすがに新作は別世界。ほんと、この世界は日進月歩。国産の劇場用CG立体アニメーションの興行は今回が最初になる(※東京新聞の記事により)記念的な作品です。

きかんしゃやえもん 旗、チラシ、ぬりえ
今回のやえもんは、東京駅の敷地の中に取り残された古い車庫でほこりをかぶった、時代から取り残された機関車。できる活躍といえば、猫に追われたネズミたちをかくまってやることぐらいで、日々通過していく最先端の電車車両たちからは、役立たずと思われている。そんなある日、車庫の整理でやえもんはスクラップにされると知ったネズミたちは、もう一度やえもんを活躍させスクラップの運命から救い出すことを計画する。

絵本とも、前回の映像化「きかんしゃやえもん D51の大冒険(1974)」とも違った展開は、完全新作の面目躍如。時代を現代に置き換えた脚本は、現在のこども視点を大切にしているのを感じるし、ナレーションの土井美加さんのやさしい語り口とあいまって、昔の幼児番組を思い出します。(土井さんはバンダイ時代のディズニービデオでナレーションをよくしていましたっけ。)

ストーリーは絵本とはかなりかけ離れていて、キャラクターもやえもん以外はほとんどオリジナル・キャラクター。ネズミがやえもんに味方するキャラクターとして登場するイメージや敵役がディーゼル車なのも、原作というよりも74年のアニメからもらった設定のように見えます。
劇中話されるやえもんの過去の手柄のいくつか(例:動けなくなったディーゼル機関車を押したなど)は原作には登場ぜず、思い出されるのはやはり74年版の映画。総合的に考えると、今回の映画は原作50周年を謳いながらも、旧作アニメの更なるリメイクといった印象があります。

そういえば、やえもんのキャラクターデザインも原作のような醤油顔ではなく、ヒゲをたくわえた74年版を踏襲……。それにしても、日本人らしい名前をしていながら、なぜ青い目なのだろう。

基本的にやえもんという絵本を愛して、キャラクターに対して愛着がある分、“新作が作られただけで満足”という感想なのだけど、職業的に見れば不満点も。ロケーションがあまり動かず、世界観が狭く感じてしまった展開や、テーマ的には現在を映した変更を施しつつ、決着に関しては手放しな印象が残っています。脚本には改善の余地を感じます。

自分の読みでは、絵本のラストである交通博物館が、さいたまの鉄道博物館になると勝手に読んでいたので、東京駅を上野方向に走る展開に納得していたのですが、以外や予想はおおハズレ。ラストはそれでいいのでしょうか。

高齢者は老人ホームで余生を送るのをよしとしているようにも読めてしまう原作絵本のラスト、そして時代の違うものだからこそ違う活躍の場があるとした74年版映画に比べて、今を反映させようとした意図なのかもしれませんが、寓話的なようでいてファンタジーっぽく、無責任に思えるのが残念です。いっそ、もっとファンタジーに振り切ってもよかったかなぁ。

とはいえ、自分にとって特別なキャラクターの再生。立ち会うことが出来てとても嬉しい作品でした。