三菱銀行貯金箱/バンビ(1964)2011年06月27日 05:45

三菱ディズニーキャラクター銀行貯金箱/バンビ(1964)
前年に始まったばかりの三菱銀行のディズニー貯金箱第二弾はバンビの登場。ディズニーを代表するキャラクターと言う意味では現在よりもはるかにバンビの存在が大きかった時代です。ベビー用品の多くにバンビがプリントされている風景、自分にとってもノスタルジックなものとして記憶をたぐっています。あの感じ、多くの人も共感してもらえると思います。

前年のドナルド・ダックは、後年に継承されていく二頭身タイプのディフォルメでしたが、翌年にしてまったく違うアプローチでの立体化です。

三菱銀行ディズニー貯金箱/バンビ (バック・ビュー)
あくまでも劇中イメージの再現に力を注ぎ、ディフォルメは最小限にとどまっています。細くしなやかな足を表現するために緑の草木と丸太など、背景を入れるのは苦肉の策。それでもディオラマ(情景モデル)としてまとまり、楽しい立体になっています。

前年はかん着で首を回せるギミックがりましたが、今回は人形部分は完全な一体成型。遊ぶものとしては不向きで、完全なディスプレイモデルへと方向性を一新しています。台座に見える茶褐色のパーツは、貯金箱のふたの役割もかねていますが、むしろ情景モデルとしては余計なパーツ。

三菱銀行貯金箱/バンビ(1964)投入口と台座パーツ
そもそもこのモデルは人形部分にコインの投入口がありません。貯金箱として使用するには底面のスリットから投入し、中に収めてからまた立て、開封するには底を引き剥がすという設計になっています。
普通に考えれば背中に投入口を開ければ良さそうですが、あくまでもディスプレイモデルとしての美しさを優先させた結果のように見て取れます。
三菱銀行貯金箱/バンビ首長ver.&首短ver.
その証拠とでも言えばいいのか、この年のバンビにはバージョン違いが存在します。通称「首長バンビ」で、おそらくこちらが最初に流通したものです。頭の大きさに対して首が細すぎるために引き抜きに無理があるようです。この固体を見ても、首の周りは引き抜きのスクラッチで方が痛んでから抜かれたように見受けられます。二者を比べると、修正されたのは首の太さだけでなく、引き抜き時にカーブを描くように、引っ掛かりが少しでも低減されるように顔の角度も修正されています。

気泡も多く、当時の技術力からすると限界に挑戦した立体だったのかもしれません。現存するバンビの多くは圧倒的に首太の丸っこい姿の後期版です。
でも、結果オーライでしょうか。丸みを帯びたフォルムが強調され、シリーズの方向性としては後期版がしっくりきます。

三菱銀行貯金箱/バンビ首短ver.&首長ver.
首を太く短くした分、比較すると寸詰まりですが、現在シリーズ全体を振り返ると初期版バンビは一回り大きく、浮いた印象です。台座の分、背丈が下がっていますが、これらは暗中模索でシリーズが進み、模索された結果を物語っているようです。

映画の『バンビ』は森の中の自然と戦うキャラクターでしたが、この貯金箱バンビはソフビ人形の歴史で戦った証人ともいえる存在です。