映像ドラッグ「風立ちぬ」を味わう2013年07月23日 23:42

風立ちぬ/看板スタチュー
大ヒット中の宮崎駿監督のアニメーション映画「風立ちぬ」を見てきました。

なんというか、想像していたよりははるかに口当たりが良くて満腹になれる映画でした。それは主に画面というか、アニメーションの「手作業」という部分で、逆に言うと以前よりも作画はばらつきを感じる、統制がとれていた印象の過去と比べるとむしろ“落ちた”と言ってもいいような部分なんですが、あえて効果音を人間の声でやったりする部分と同じで、手のブレ感をあえて味わうような全体のテイストが、むしろ今だからこそ最高級の嗜好品なのだとおもわされるようなモノになっていて、感心させられる部分でした。

作中、“夢”を重要な位置に持ってきている映画で、その非現実感がとても心地よい作品でしたが、反面、宣伝に使われている史実をもとにしているというミスリードがとても不具合を起こしているというのも同時に感じる作品です。痛みとしてのイメージシーンこそあれ、そのものを描かない“戦争”なんて、「あれ、この世界では戦争やってたのか?」とあっけにとれるほどのバッサリ演出。賛否があるのもとても分かると言うか。

文句も多数あるのですが、逆もまた然りで、気が付くと反芻している自分は術中にはまったカモでしょう。
あれだけ貪欲に何もかもを離さないで身元に置く主人公の姿には、若々しい夢と同化できる監督の心の若さを感じました。