絵本『きかんしゃやえもん』と舞台2007年03月26日 06:23

「きかんしゃやえもん」文・阿部弘之 絵・岡部冬彦 岩波書店刊
先週、引越しの為に台車に乗る弁慶号を見ながら、絵本の『きかんしゃやえもん』のラストシーンがフラッシュバックしました。

自分にとっては覚えるほど読み込んだこの作品で今でも大切な一冊です。 時代と言う波に押され、東京の交通博物館に展示されるために輸送されるきかんしゃやえもん。考えてみれば作品に描かれた実在の舞台が消えていくのだと思うと、返す返すも残念でなりません。

やえもんのストーリー自体はフィクションとしても、その車体には実在のモデルがあります。それが展示されていた日本最初のSLであり、重要文化財にも指定されている一号機関車です。

(↑バカが一緒に写っていますが気にしないで下さい。)orz

彼もまた絵本の主人公のように新天地へ引越していくのですね。できることならその様子を眺めてみたいものです。

電気機関車に押され、不便なSLは壊してしまえと人々に追われ、居場所がなくなったやえもん。そのストーリーに疑問をもつことはこの年齢になるまでただの一度も無かったのですが、友人につっ込まれてしまいました。
結局、引退を強いられてハッピーエンドなのか、と。
追いやられて博物館で暮らす姿はどことなく老人ホームに暮らす姿のようでもあります。
言われて見れば、SLだからこそ、古いものだからこそ新しいものを見返すストーリー展開をするほうが今日的であり、物語としてまとまりが良い気がします。たとえば停電の中に走ることができて活躍するとか……。

時代のせいかもしれません。それとも利便性の対立を越えたところにテーマを求めた作者の狙いかもしれません。
どちらにせよ、この物語は子どものためにたたずむその存在意義こそ、やさしきハッピーエンドなんだと自分は思います。

一昨年には絵の岡部冬彦さんがなくなり、昨年には交通博物館が閉じました。残念なことが続きましたが、あと2年で50周年という節目です。何か記念出版のようなものが出ることを期待したいです。

財団法人大阪国際児童文学館 日本の子どもの本100選:きかんしゃやえもん

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