『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』はどうやって『グリンチ』を盗んだか2006年10月31日 09:51

"THE NIGHTMARE BIFORE CHRISTMAS" Japanese sneak preview ticket (1994)
ハッピーハロウィン!
……って、結局日本で定着してるんですか? どうも売り場だけの都合にしか見えないのですが。

以前、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(以下”TNBC”)』の軽いファン宣言をしましたが、決して作品がどうでもいい訳ではありません。映画は散々観ているし、現在公開中の3D版は観に行きたいし、キャラクターグッズにサイフの紐を緩めている自分がファンでないはずがありません。むしろこだわり持って作品を見ていますが、こだわりどころが世のファンとはズレていると思っているのです。

冒頭の試写状だって、自分にとってのプレミア・チケット。一緒に行ってくれる人が居なかったから手元に残っています。今のような知名度になるとは想像もつきませんでした。
軽いファン宣言の裏側は強いて言うならば『TNBC』よりも『グリンチ』の方が好きだから、という言い方ができるかもしれません。比較問題かよ!と言われそうですが、『TNBC』は『グリンチ』を色濃く感じるパロディ作品の印象で、デザイン面のオリジナリティは認めるものの、ストーリーライン骨子にオリジナリティを感じていません。

現代アメリカのマザーグースと例えられる絵本作家 Dr.Seuss(Dr.スース)が1957年に発表した『いじわるグリンチのクリスマス/How the Grinch Stole Christmas(グリンチはいかにしてクリスマスを盗んだか)』は現在も出版され続けるアメリカの国民的ロングセラー作品。1966年チャック・ジョーンズによってアニメ化され、クリスマスシーズンにリピートされ続けている作品だそうです。
2000年にはジム・キャリー主演で実写映画化されたので、そちらで記憶している人も多いでしょう。


怪物がクリスマスを盗むストーリーラインは『いじわるグリンチのクリスマス』も『TNBC』殆ど同じです。飼い犬にソリを引かせるイメージまで再現されグリンチの愛犬が”マックス”でジャックの愛犬が”ゼロ”という裏返しのネーミング。

1958年生まれのティム・バートンが『グリンチ』の作品シャワーを浴びて育ったのは想像に難しくありません。特に怪物の孤独を前面に押し出したアニメ版はお気に入りだったのではないかと思います。
近年になって繰り返しドラキュラ俳優のクリストファー・リーを重要な役どころにキャスティングしているセンスはアニメ版『グリンチ』のボイス・キャストにフランケン・シュタイン俳優のボリス・カーロフを据えたコンセプトがルーツなのではないかと自分は勝手に思ってます。

ジャックがサンタクロースを”サンディ・クローズ(砂っぽい爪)”と誤解するくだりはルーニーチューンズのトゥイティ&シルベスターシリーズのタイトル『ネコの海岸物語/原題:サンディ・クローズ Sandy Claws(1954)』が浮かびます。
ビーチで繰り広げられる二匹の追いかけっこを描く短編で”サンディー・クローズ”はシルベスターの爪を指した題。アカデミーにもノミネートされました。直接クリスマスに関係ある作品ではありませんが、この語呂がスタッフの頭に残っていたのではないかと推察しています。しかし、このアニメファン的引用が意識的なのか、そして首謀者がティム・バートンなのか、ヘンリー・セレックなのか、はたまた別人なのか、判断つきません。

最近になってやっと、ティム・バートンのインタビューで『グリンチ』が好きでインスパイアを受けていると発言している記述を見かけました。長年感じていたことを裏打ちされたようでとても胸がすく想いです。

このエントリータイトルをあえて”盗む”とパロディで入れましたが、消して盗作だのなんだのを言いたいわけではありません。
アメリカの文化的バックグラウンドからすればあたりまえすぎて改めて2作品を並べる必要もないのかもしれません。
作品から感じるのはティムが子供の頃からグリンチを愛読して育ったであろうファン体験で、悪意のある引用は感じません。むしろ、溺愛しているスタンスに作家としてよりもファンとしての姿勢を感じてしまっています。そのせいで冒頭に書いたような冷めた視線で『TNBC』を見てしまうのかもしれません。

世間では類似点を見つけ盗作問題へとはやしたてる嫌な風潮ができ、悪意へと誘導するするケースが多くげんなりします。
でも、この作品についてはむしろ理想的な次世代へ再生産を行う良い風景に思えてなりません。
師匠から良い所を盗むのは芸術家なら当たり前の話。子供時代から浴び続けた良い影響を自然ににじみ出している『TNBC』のムードも魅力の一つだと自分は思っています。

■字幕にならない英語たち:スペースアルク
 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』/『グリンチ』 http://www.alc.co.jp/eng/eiga/jimaku/jimaku31a.html
http://www.alc.co.jp/eng/eiga/jimaku/jimaku31b.html

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