ワンと言えば『わんわん物語』~THE DOG CHARACTERS ― 2006年07月25日 16:17
説明不要の名作、『わんわん物語』のすごさです。
今宵はディズニー・クラッシック作品『わんわん物語
個人的な思い出として、幼いころ親父に手を引かれ見に行った映画だったので強い思い入れがあります。それを切り離しても素晴らしいアニメーションだと評価できるクオリティーの高い作品です。

それまでのディズニー・アニメーションは有名な”おとぎ話”を原作にしたアニメーションでしたがこの作品はオリジナル。原作と呼ばれる小説もありますがそれはこの映画の為に書き下ろされた作品です。
(ウォルトが奥さんに子犬をプレゼントするときに帽子の箱に入れたことが発端で生まれたストーリーとしてこれまで紹介されてきましたが、それ以前から企画があったことが最近明らかにされました。)
個人的にディズニーの「プリンセス」路線の多くは思い入れが湧きません。
高貴な身分で容姿も整った者同士で織り成すラブ・ストーリーは親近感のない遠い世界。感情移入の場所が難しいのです。
以前はラブストーリーが嫌いなだけと自己診断していたのですがそれは違うようです。『わんわん物語』は犬を主人公にしていながらも内容は正にラブ・ストーリー。でもプリンセス達と違うのは身分も住んでいる世界も違う相手と恋に落ちる点です。自分はこっちの方が賛同できるし、感情移入できます。
定番の結婚して終わりと言うハッピーエンディングではなく、子供達まで生まれている所もチャレンジに見えます。つまり、婚前交渉があったということがうっすらと描いている点が絶妙。そのシーンの背景原画は現在開催中の『ディズニーアート展』で確認できます。(そんな解説はありませんが。)ムードある夜明けの背景はかなり意味深、知っていれば、よりニヤニヤと楽しめる絵になると思います。
それらを考えると他のディズニー作品とかなり違う作品だと思います。
『アラジン(1992)』の公開時、物語の中盤にキスシーンがあることが型破りだと話題になりましたが、遥か前にもっと大胆なことをやっていたのです。

犬のキャラクターは、大別して擬人化され姿だけは犬だけど中身が人間と言うグーフィーのようなものと、犬であることを脱線しないキャラクターがあります。この作品の場合は後者ですが表情、感情は擬人化され生活環境や習性は正にリアルな犬のままと言う絶妙のバランス。
多くの犬キャラクターに通じる描き方ですが描写がリアルで強い存在感があります。そして感情表現が豊かであるからこそ観客の感情移入が自然に“飼い犬”と言う特殊なシチュエーションに共感出来てしまいます。
![LADY and TRAMP/French Post card from [Euro Disney]](http://shirow.asablo.jp/blog/img/2006/04/29/11e68.jpg)
初ソフト化時、「ベルベットのような手触りのアニメーション」と言うコピーをあちこちで見かけたのですが、短く言い得ている表現だと思います。
しっとりと、肌に優しい至宝ともいえるクオリティのアニメーションはもう出ないと思える完成度です。
いわゆる”キャラもの”として楽しんでいるスタンスとは違うのですが映画の出来は正にナンバー・ワン。犬のキャラクターを語るときに外せない映画です。
▼THE DOG CHARACTERS
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▼『わんわん物語』関連
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ワンと言えば『わんわん物語』~THE DOG CHARACTERS ― 2006年07月25日
DVD『わんわん物語』プラチナエディション ― 2006年07月24日
ディズニーアート展へ ― 2006年07月20日
DVD『わんわん物語』プラチナエディション、発掘された歴史! ― 2006年07月24日 14:49
ディズニー・クラッシックの中でもお気に入りの作品なのでビデオ、LDと買い続けてきましたが、今回のソフトに収録されたメイキングはそれまで定説だったものが覆る驚きの内容でした。
これまで『わんわん物語』と言えば原作小説とウォルトの体験のミックスしたものと言われてきていたのですが新たに語られるメイキングは戦前から原型の企画があったという驚きの新事実。映画にはノンクレジットのジョー・グラントが飼っていた自分の犬をモデルにした物語が発端だと明かされました。
ジョー・グラントは白雪姫の魔法使い、ダンボ、ピノキオ、ファンタジアのヒヤシンス(カバのバレエ・ダンサー)など初期の傑作キャラクターを生み出したアニメーターで立ち上げ時期からディズニー作品意参加していた古株でしたが1949年スタジオを離れ1980年代中ごろディズニーへ復帰していました。近年の作品も手がけ『ポカホンタス』で葉が舞い踊る風のシーンは氏のアイデア。亡くなったお母さんを表現する美しいもので印象的なものです。 老いて尚あふれるアイデアは若々しさにあふれ、「ウォルトが生きていたらCGアニメは作っていたと思うよ」と柔軟な意見でいました。
3DCG映画『チキンリトル』で「ジョー・グラント」へ捧ぐと最後にクレジットされる通り、昨年の5月に96歳で亡くなっています。仕事中机に倒れる姿はクリエイターの理想的な往生のように感じてしまう自分は、ある種、憧れのようにその仕事と一生を眺めています。
ジョーの家族にとって『わんわん物語』は自分たちの物語であったはずなのにノンクレジットで悲しい思いでいたようです。製作から半世紀以上、当初のスケッチから考えれば60年以上のときを経て真実が明かされるメイキングはファン必見、それだけで購入の価値ありでした。
本編はデジタルリマスターされたシネスコのみで収録。今回DVDを購入したので古いソフトを処分できると思っていたのですがビスタとシネスコの2バージョンで製作され、レイアウトと撮影が違うバージョンで収録している旧ソフトもやっぱり必要だという結論に……。マニアの荷物は増える一方です。
『バグズライフ』は一枚でシネスコとTVサイズ両方収録しているソフトなので、容量的には可能なはず。ゲームとか収録する前にその辺が足りないという印象もあるのですが、全てはメイキングの内容に拍手して許します。
先日足を運んで原画を見た『アート・オブ・ディズニー』で紹介されている『わんわん物語』のストーリースケッチ。その絵を使用したメイキング映像も収録されています。
◆アマゾンでDVDを探す>わんわん物語
ディズニーアート展へ ― 2006年07月20日 18:11

オリジナルの催事を再現するべく準備が進められ、新たにディズニー本社からの貸し出し作品を加えてまれに見る大型展示となりました。
◆ディズニーアート展公式HP: http://www.disney.co.jp/disneyart/
初日には宣伝番組をかねた特集番組がNTV系で放送されたのですが、いかにも日本テレビらしい展開で、宮崎駿監督や高畑勲監督も当時足を運んでいて影響を受けたかもしれないという触れ込み。
「それぞれのクリエイターには尊敬の念が消えません」
と、奥歯に何かを挟んだ宮崎駿監督のコメントにはニヤニヤさせられてしまうものでした。

影響を受けた作品(好きな作品だったか。)を聞かれて、『メロディ・タイム/Melody Time(1948)』の中の「サンバは楽し/BLAME IT ON THE SAMBA」でのウォード・キンボールの仕事を挙げていました。
DVDボックス
コミカルな動きを得意としているキンボール作品を選ぶ姿は、意外な感じです。
さて、展示会場はしょっぱなに発掘された千葉大コレクションを持ってきています。250点の内、保存状態の良かった200点を展示とされていますが、それでも経年劣化はかなり見て取れて、改めてセルの保存は難しいと思う状態でした。(海外アニメーション雑誌に普通に修復屋の広告があるのも頷けます。)
ここにもあって、他でも時折見かけるのですが絵のある部分だけを切り取ってしまってるセルはどういう意図であの状態になってしまっているのでしょう……。
本社にもない品として特筆されている世界最初のフルカラー・アニメーション「花と木」のセル! ……は、むしろ拍子抜けの小ささに、彩色の大雑把さ(汗)。
やっぱり、自分にとってはペンシルとストーリースケッチの方が素直に感動できました。特に好きな作品は別格の興奮があります。

新聞の記事の時から楽しみにしていた『わんわん物語』のストーリー・スケッチ!これでしょう、と近寄ってみるとTV放送のメイキング番組用に新たに描き下ろされたものと判明。えぇえぇえぇえぇ~!?。
同時代の別バージョンという意味で本物だし、貴重なんですが製作過程で実際に使われていたものを想像していたのでちょっと力みすぎました。でも、絵のクオリティは再生産とは思えない軽快さ。描線と彩色の走り方がとても良かったです。
コンセプトアートの名手として紹介されるメアリー・ブレア作品群。『ピーターパン』『ふしぎの国のアリス』などが紹介されていました。
以前から洋書のディズニー関連のアート本で見かける人ですが、この規模は初体験。時代が一周して今風(正確には今、流行っているレトロ)になっているのが興味深いです。時代を越えた色使いの巧みさに感心させられました。
そして”これでもか”と言うほどの作品点数を備えた『眠れる森の美女』にまつわる作品群! それもそのはず、オリジナルの展示は当時の最新作であるこの作品のプロモーションもかねていたのだから。

……この作品絵は素敵だけど内容は苦手なんだよなぁ。(ヲイ!)
当時、ディズニーランドのオープンにあわせて製作されていたこの作品、迷走をきわめて何度も監督が変わり、製作期間は予定オーバー。今で言うメディアミックスの一種なのでしょうが本場カルフォルニアのディズニーランドに建造されたお城は『眠れる森の美女』の城です(日本はシンデレラ城)。結局、映画が公開されたのはディズニーランドのオープンの4年後、テーマパークのお城は4年間、誰も知らない映画の城でした。
直線で構成された背景とキャラクターは様式美といえる美しさ。(そこは否定しません)しかし、絵だけの魅力で押し切られ肝心の”語り”の完成度が足りないように感じます。
ウォルトの傲慢さにスタッフは振り回されて、70mm超大作の器だけがあるような印象。正直、『ファンタジア』のように芸術性重視で話の中身は二の次、テーマパークに気を移してたんでしょ、と。
後のアニメスタッフに任せる比重が多くなった作品の方がこの作品よりも親しみやすいと考える自分は、いわく苦手の一本なのです。
絵の完成度に圧倒と言う意味では常に圧倒されっぱなしの展示作品。うーん、これで作品に思い入れがあれば200%楽しめるのですが……。純粋に絵として鑑賞でした。
展示コーナーでもっとも思い入れあるブースと言えば、やはり伝説の9人のアニメーター『ナイン・オールドメン』を紹介するコーナーでしょうか。
時のアメリカ大統領フランクリンD.ルーズヴェルトが最高裁判所を「9人の老人」と呼んだのに由来し、ウォルトが自社の重鎮アニメーターを仕事への尊敬を込め、洒落てそう呼びました。
”ナイン・オールドメン”9人の中でも、ご存命のオリー・ジョンストン、近年までご存命だったフランク・トーマス、ウォード・キンボール、マーク・デービス などは作家性に触れる情報に恵まれていました。(特にフランク・アンド・オリー公式HPの仕事紹介ページは簡潔ながら、さすが当事者という良い資料です。)
◆アマゾン(洋書)”Walt Disney's Nine Old Men
※米Amazonでは中身を少し確認できます。↓ http://www.amazon.com/gp/reader/0786864966/103-3023164-1631057
◆アマゾン(ビデオ)
ドキュメンタリー映画『フランクとオリー
◆『フランクとオリー』公式HP: http://www.frankandollie.com/
しかし、展示作品のセレクトには疑問が残る作品も少なくありませんでした。今回の展示はジブリ・スタッフが出向いて貸し出し作品をセレクト。そんな売りからして相当こちらの意向を反映していると思っていたのに、1997年4月15日から東京ディズニーランドの中のディズニーギャラリーで展示された『ディズニー・アニメーション・マジック~魔法の王国へのひらめき』で見た作品がかなり再上陸していました。
選ばれる名作は常に同じなのか、それともディズニー・アニメーション・リサーチ・ライブラリーのお勧めセットAなのか……。安心して見れる作品も多いのですが自分がもう一度見たいと思う作品に限って来てなかったり。
しかし、作家性を伝えるのがメインのはずの”ナイン・オールドメン”の作品セレクトはこれでよかったのでしょうか。中には中割りみたいな角度の絵(特にレス・クラークのピノキオは、それでいいの?)が、よりによってメインとして展示。作家が可哀そうに思えました。
キャラクターも複数人で担当しているものより、キーアニメーター対応、なるべく単独に近いキャラクターを選ぶ方が誤解が少なくていいと思うのですが。それが日本と違ってキャラクターでアニメーターを分けている利点であり個性でもあるので、分かりやすく伝える手にもなると思います。
範囲を『眠れる森の美女』までに限定してしまったために選定の首を絞めていないか心配です。そのわりには製作風景写真は後年のもあるし……。
おっと、セレクションに不満はあれど作品に不満はありません。
特に監督業ばかりの印象だったウルフ・ガングライザーマンの動画の手腕、その迷わないダイナミックな線さばき、のびやかさを再発見できたし、繊細な印象が強かったミルト・カールの絵がワイルドさも併せ持っているとか、生ならではの迫力と発見に満ちています。これだけの興奮はン十年に一度の展示でしょうから、じじっくり何度も噛みしめたいものです。

▲うっとり見つめるアリス『不思議の国のアリス』by ミルト・カール
(このポストカードはTDL商品で今回の展示会のものではありません。)
その興奮は会場を後にしても尾を引き、家に帰ってからは目録を眺めため息をつき、自分の持っていた洋書を引っ張り出して見比べては感心したりと、なかなか寝付けないほどでした。
会期中にまだ何度か行きたいなぁ。
ディズニー・ギャラリーとTDLクリスマス・ファンタジー2005 ― 2005年12月22日 02:00

目指すは入ってすぐの左手2階、ギャラリー。ディズニーの犬キャラクターとネコキャラクターを集めた展示は趣味のストライクゾ-ン! えんぴつ線の動画やストーリースケッチが展示、「101わんちゃん大行進」「おしゃれキャット」「わんわん物語」「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」「オリビアちゃんの大冒険」「ビアンカの大冒険」などのクラッシック作品に加えて所期の短編や、これからの作品「アメリカン・ドッグ」まで含まれる豪華な内容です。
惜しむらくは、以前はオリジナルのペンシル・ドローイングが展示され目録も販売される展示を行っていたのに、展示は複製品、目録なしと言う冷遇振り。解説もかなり大雑把で親切とは思えず、展示方法も作品の一部が重なって確認しにくい部分があったり、オリジナルはアナログ作品なのにデジタルで加工されてしまってる作品があるといったルーズな姿勢。
オリジナル作品の魅力とセレクトの素晴らしさだけでおなかいっぱいにはなれたのですが、展示方法には改善を期待したいところでした。TDLに絵を見に来る客なんて少数だから、無理なのかなぁ。
絵のクオリティから行けば決して高い時代ではない作品も、自分にとって思い出深い作品だと、どんなに長時間見ていても飽きないです。
個人的にお気に入りは「オリバー」の別テイクキャラ表、「わんわん物語」のストーリースケッチで眉毛の太い処理のレディ、「ビアンカの大冒険」のルーファスのスケッチ。趣味まっしぐら、マイナー作品ばっかり。
せっかくのTDLなので年間パスポートを持ってる友人とクリスマス・イベントも楽しんできました。
ディズニーのお宝発掘ニュース雑感 ― 2005年12月21日 17:17

■各社報道
http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/cinema/news/20051220k0000m040053000c.html
http://www.asahi.com/national/update/1219/TKY200512190262.html
60年(昭和35年)のことが資料として認知されていなかった事態に驚き。
ディズニーと言う組織がアーカイブを持って徹底的に資料管理しているからと過信していた。
でも、自分の身の回りを考えればそれが普通なのかも。40余年と言えば長い、長い。
自分の感覚からするとセルよりもストーリースケッチが味わい深くて好み。 完成品と同じものを見るよりも製作プロセスが伺える作品が興味も尽きないし、手の良さを感じる。
奇しくも東京ディズニーランドのギャラリーでは「ディズニー・キャッツ・アンド・ドックス」を開催中。発掘された「わんわん物語」ストーリースケッチとは違う段階の絵を鑑賞することが出来る。……行かなきゃ!!
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