映画『チキンリトル』(英語版) ~ディンダル・センスのCG仕上げ2006年01月20日 08:09

『チキンリトル』映画パンフレット
正月しょっぱなのもう一本はディズニー自社製作CGアニメの記念すべき1作目「チキンリトル」です。3D版は日本語版で見ることを想定して英語版でまずは初見です。

まず世間を騒がせたのがこの映画の主人公の声です。ろくにディズニーの話をしない人までがTVCMを見て「花沢さん」を連呼してましたが、英語版はかなりイメージが違います。ルックスに不釣合いなくらい思春期ボイス。(藤子ファン的には「21エモン 宇宙にいらっしゃい!!(80)」で、点目の顔の21エモンに井上和彦があてたギャップに似たものを思い起こさせました。)ベイビーフェイスな思春期の子供はルックスからして自立を浮き彫りにさせるお膳立てです。ストーリーが進むにつれてチキンリトルは正にそういうキャラクターだと分かってくきます。

メインに描かれるのはチキンリトルと父の親子の物語。
父に理解してもらいたいチキンリトルの空回りが騒動を甚大なものにしていきます。世間の目を気にして子供の言うことを信用せず、おとなしくして欲しいとばかり願う父・バック・クラック。「空が落ちてきた」と騒いだ汚名は返上されるのか。

以前にもエントリーで書きましたが、原作はイギリスの寓話。数々の展開やギャグがディンダル風味に料理されているのですが、元の話のパーツをそう使ったのか!という驚きや笑いが満載です。
……逆に言うと、知らない人にとってはズレの絶妙さやモチーフのハマり具合の面白さが伝わっているのか心配です。先日も面白いか問われて正直にそう答えてしまいました。まっさらな目で見るとまぁまぁの笑いやまぁまぁの感動、まぁまぁの展開と終わってしまうのではないかと危惧している自分がいます。「どんぐり」「空が落ちる」「いじわるきつね」など、こだわりのモチーフの変貌は見所です。

センスで押し切るディンダル節全開でまるで「キャット・ドント・ダンス」が帰ってきたようなキャラクターの動かし方。シンプル&オーバーディフォルメなシェイプが立体的に描かれる映像は不思議な感覚です。
カートゥーンものの基本、ストレッチ&スクワッシュ(stretch and squash=キャラクターが伸びたりつぶれたりして動きのタメを作るアニメーション技法)を再現しようとする試みは『マダガスカル』(ドリームワークス・アニメーション)でも試みられたものですが、『チキンリトル』はかなりのツブレっぷり伸びっぷりを見せてくれます。さすが、ワーナー寄りの人。
ハンドドローイングアニメをスタッフを大量導入して作られたと聞いて大いに納得。そして一部でもスタッフを救う采配になったことに感謝。(でも、やっぱり手描きアニメを見たいですが。)

シンプルなオーバーシェイプは質感がないからこそセンスを感じさせる絵だと思うのですが、『チキンリトル』はそれを立体として描かなければいけないアニメーション、もっとおとなしくされて当然なのにブタのラント始め、見ての通りの個性的なキャラクターたち。”みにくいアヒルの子”とからかわれるアビーは意外やヒロイン・ポジションのキャラクターですよ!

今回のアニメは戦時中の短編アニメのリメイクとはいえません、原作から新たに作られたもうひとつの『チキンリトル』です。子供の頃から慣れ親しんだであろう話を明るくまとめたディンダル監督の優しさはファンとして微笑ましい部分です。たとえるならば『人魚姫』の悲劇をハッピーエンドの変更してしまった同じくディズニー版”人魚姫”『リトルマーメイド』のようです。
寓話の主人公『チキンリトル』が”ありもしないことに恐れおののく小心者”の代名詞であることを頭の片隅に入れば、主人公の活躍がもっと胸すくもになると思います。未見の方はぜひ、その辺をご理解してくださいまし。

ディズニーマニア的にはエンドクレジットにあがる”ジョー・グラントに捧ぐ”の 文字に胸熱くなることでしょう。

監督のインタビュー記事。必読! ↓
■http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/cinema/cinecom/news/20051215org00m200114000c.html

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